危険な心理実験|「同調圧力×正常化バイアス」から命を守り抜け!

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新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、私たちは今まさに、非常事態に直面している

 

  • 感染症の流行
  • 地震や洪水などの災害
  • 突発的な事件事故
  • テロやミサイルによる攻撃

 

あらゆる「身の危険を感じる状況」から自分の命を守り抜くため、一体何ができるのか?

 

危機的状況から命を守るために、必ず知っておくべき心の性質」について。

 

この記事を最後まで読むと、あなたとあなたの大切な人を守り抜ける確率がアップする。

 

 

大邱地下鉄放火事件

 

2003年、大韓民国大邱広域市の地下鉄で、一人の男による放火事件が発生しました。

 

この事件による死者は192行方不明者68名負傷者は151と、甚大な被害をもたらしました。

 

ここまで多くの犠牲者が出てしまった原因には、初期対応の不手際管理体制の不備等、様々な要素が指摘されています。

 

その中でも、私たちが特に注目しなければならないもの

 

それが、同調圧力「正常化バイアス」による、人間の誤った意思決定なのです。

 

同調圧力」とは?

 

人間は、周囲の人と違う行動をとることに、非常に大きな心理的負担を感じます。

 

「場の空気を読む」という言葉があるように、私たちの意思決定は、ときに自分ではない「その場の多数派」が握っているのである。

 

大邱地下鉄放火事件においても、この「同調圧力」が、多くの犠牲者を増やしたとされているのです。

 

突然の停電、車内に充満する煙。

 

明らかな異常事態に、誰もが気づいていた。

 

しかし驚くべきことに・・・

 

乗客の多くは座席に座ったまま口や鼻をおさえるだけで、その場にとどまる姿が、乗客によって撮影されていたのである。

 

その結果、たくさんの人が逃げ遅れ、命を落とした

 

「みんな逃げないから、私も逃げない」

 

命の危険を感じるような状況においても、人間は同調圧力による意思決定を行ってしまうのである。

 

「正常化バイアス」とは?

 

災害や事故などの非常事態において、自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価することで、心の平静を保とうとする脳の作用である。

 

「きっと大したことない」

「自分だけは大丈夫」

「まだ大丈夫」

 

こんなふうに人間の脳はパニックを避けるため、直面しているピンチから、必死で目を逸らそうとする習性があるのだ。

 

大邱地下鉄放火事件においてもこの「正常化バイアス」が、被害を拡大させた一因と考えられている。

 

  • 火災報知器の発動を「誤作動」と思い込んだことで、初期対応が遅れたこと。
  • 指令センターの状況軽視により、適切な指令がなされなかったこと。
  • 大したことないのでそのまま待機してください」という車内アナウンスが流れたとの証言があること。
  • 乗客が「まだ大丈夫」と思い込むことで、逃げ遅れてしまったこと。

 

「きっと問題ない」
「自分が死ぬわけない」
「これはいつもの日常なんだ」

 

そう思い込もうとする人間の脳の性質が、助かるはずの命を失う原因となることがあるのだ。

 

心理実験による検証

 

このような人間の性質を確認するため、韓国においてある心理実験が行われました。

 

「テスト」と称して、数名の人間をひとつの部屋に集めます。

 

実際の被験者は1名であり、残りはすべて実験の目的を知っている演技者たちです。

 

被験者は事前に、試験中は「席を立たないこと」会話をしないこと」などの指示を受けます。

 

大邱地下鉄放火事件のときと同じように、部屋中に煙がたちこめる状態を作り出したら・・・

 

被験者は、一体どのような行動をとるのか?

 

その結果は、衝撃的なものでした。

 

ほとんどの被験者が明らかな異変を感じながらも声をあげず、席についたまま平然を装い問題を解き続けたのです。

 

もしこれが実験ではなく、実際の火災だったら・・・

 

集団の中で「第一声をあげること」が、人間にとっていかに難しいかを、まざまざと見せつけられる結果となりました。

 

国内での事例

 

このような事故は、決して海外だけの話ではありません。

 

2011年 東日本大震災

 
警報が出ているのを知りながらも非難しなかったり根拠のない楽観視により避難先の決定を誤ったことにより死亡した人がいたことが指摘されています。

 

2014年 御嶽山噴火

 
58名の犠牲者を出した2014年の噴火では、死亡者の多くが噴火発生後も火口付近にとどまり、噴火の様子を撮影していたことがわかっています。

 

中には、携帯電話を手に持ったままの死体もあったと報告されている。

 

こんな話を聞くと・・・

 

「一体なぜそんな行動を?」
自分は絶対そんなことはしない」

 

そう思いませんか?

 

しかしこれこそが、「正常化バイアス」なんです。

 

同調圧力」と「正常化バイアス」は、決して他人事ではありません。

 

我々すべてが持っている、脳の性質なんです。

 

コロナ禍における作用

 

2020年、未知なるウイルスの世界的感染拡大は我々人間にとって、まさに非常事態といえる状況です。

 

コロナ禍においても、人間の「同調圧力」と「正常化バイアス」は、現在進行形で作用しています。

 

同調圧力」の例

 

  • 在宅勤務が可能だが、みんな出社しているから出社する。
  • みんながマスクをしているからマスクをする。
  • コロナが不安だけど、自分だけ休むわけにはいかない
  • コロナは心配だけど、付き合いで飲み会に参加する。

 

「正常化バイアス」の例

 

  • 若者は重篤化しないから大丈夫
  • 海外はヤバイけど日本は大丈夫
  • 夏はウイルスが弱まるから大丈夫
  • 弱毒化してるから大丈夫

 

このような心理作用の、すべてが「悪」ではありません。

 

ときに社会全体の公益のために、ときに自分の心を守るために、有益な場合もあるでしょう。

 

しかし何よりも大切なのは、自分の命を守ることです。

 

自らの意思決定には、あらゆる圧力やバイアスが影響を与えているいう事実を認識した上で、冷静な判断を下していく姿勢が必要不可欠なのです。

 

まとめ

 

  • 人は緊急事態になると、危険から目を逸らそうとする「正常化バイアス」が働く
  • 命にかかわる非常事態においても、人間の意思決定には「同調圧力」が作用する

 

実際に起こった痛ましい悲劇が、私たちに教えてくれること。

 

助かる命が助かるために、知っておくべきこと。

 

万が一あなた自身が、緊急事態に直面したとき・・・

 

自分の意思で冷静な判断を下し、命を守るための適切な行動がとれるかどうか。

 

そのためには「同調圧力×正常化バイアス」という人間の性質を、あらかじめ理解しておくことが非常に重要なんです。

 

「自分だけは大丈夫」

「みんな逃げないから大丈夫」

 

そんな現実逃避的で、他人任せな意思決定の「脳のクセ」が、ときに命までも危険にさらす可能性があるということ。

 

痛ましい悲劇を、二度と繰り返さないためにも・・・

 

私たち全員が、決して忘れてはならないのである。